LAB / CANDLESTICK
ローソク足のパターンで
勝てるは本当か?
「よく勝てる」といわれるローソク足・チャートパターンを、4銘柄・約8年のデータで実際に測りました。専門用語はできるだけ使わずに説明します。(2026.10.30 公開)
まず結論
「パターンは全部無意味」と言い切るものではありません。この記事のルールで測った限り、「よく勝てる」を裏付ける結果は出なかった、という報告です。
きっかけ:「これだけ覚えればいい」と紹介される定番パターン
ダブルボトム、三尊、三角持ち合いなど、教科書でおなじみの形は「よく勝てるパターン」としてよく紹介されています。高い勝率が書き添えられていることもあります。
ただし、そうした紹介にはどの銘柄で、いつの期間を、どうやって測ったのかが書かれていないことがほとんどです。そこで、自分たちのデータで確かめることにしました。
はじめに:「勝率」だけを見てはいけない理由
結果を見る前に、知っておいてほしいことが2つあります。
1. 「何もしない場合」の勝率と比べる
パターンに関係なく、どの足でも同じルールで入った場合の勝率を測ると、約46%でした。50%より少し低いのは、取引のたびにスプレッド(売値と買値の差)がかかるためです。
つまり「このパターンの勝率は48%」と聞いても、何もしない場合の46%より2ポイント良いだけです。パターンに意味があるかどうかは、この差で判断します。
2. 勝率より「1回あたりの平均損益(期待値)」が大事
勝率90%でも、負けたときの損が勝ったときの利益の10倍なら、トータルでは負けます。
勝率40%でも、勝ったときの利益が負けたときの損の2倍あれば、トータルでは勝てます。
この記事では、勝ったときと負けたときの幅を同じ(1:1)にそろえて勝率を測りました。この条件なら、勝率が50%を十分に超えない限り、利益は残りません。
どうやって調べたか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 銘柄 | 金(XAUUSD)・ドル円・ユーロドル・ポンドドル |
| 期間 | 2018年8月〜2026年(ユーロドル・ポンドドルは2021年6月〜) |
| 時間足 | 1時間足と4時間足 |
| パターン | 75通り(ローソク足43・チャートパターン32。買い・売りを分けて数えた数) |
| 見つかった回数 | 合計 269,695回 |
| 入り方 | パターンが完成した次の足で入る |
| 勝ち負け | 利益確定と損切りを同じ幅にして、先に届いた方で判定 |
| コスト | スプレッドを差し引く |
パターンの判定は、人の目ではなく数値のルールで機械的に行いました。ルールは測る前に決め、結果を見てから変えていません。人が目で見る形とは完全には一致しない点にご注意ください。
結果1:「よく勝てる」といわれる19パターン

| パターン | 実測の勝率 | 回数 | 何もしない場合との差 |
|---|---|---|---|
| 上昇ペナント(買い) | 56.9% | 160回 | +9.9pt |
| シンメトリカルトライアングル(買い) | 51.2% | 324回 | +4.5pt |
| 上昇フラッグ(買い) | 50.9% | 285回 | +4.2pt |
| 逆三尊(買い) | 50.2% | 512回 | +3.6pt |
| 上昇トライアングル(買い) | 49.7% | 719回 | +2.8pt |
| 下降ウェッジ(買い) | 48.6% | 870回 | +2.1pt |
| ボックスレンジ(売り) | 48.4% | 246回 | +2.7pt |
| 上昇ウェッジ(売り) | 47.7% | 1,077回 | +1.8pt |
| ダブルボトム(買い) | 47.0% | 649回 | +0.5pt |
| ダブルトップ(売り) | 45.7% | 598回 | -0.1pt |
| カップウィズハンドル / ソーサーボトム(買い) | 45.5% | 457回 | -0.9pt |
| V字(買い) | 45.3% | 1,088回 | -1.3pt |
| 三尊(売り) | 44.9% | 461回 | -0.8pt |
| 逆カップ / ソーサートップ(売り) | 44.4% | 500回 | -1.3pt |
| ボックスレンジ(買い) | 42.9% | 287回 | -3.8pt |
| 逆V字(売り) | 42.1% | 890回 | -3.5pt |
| 下降トライアングル(売り) | 41.1% | 555回 | -4.6pt |
| 下降ペナント(売り) | 40.6% | 138回 | -5.2pt |
| 下降フラッグ(売り) | 39.8% | 352回 | -6.0pt |
一番高かったのは「上昇ペナント」の上抜けで56.9%(160回)でした。特によく名前が挙がる4つ(上昇トライアングル・ダブルボトム・下降トライアングル・ダブルトップ)は41.1〜49.7%でした。
それぞれの形と、実測の勝率を図にまとめました。左が買い、右が売りです。


結果2:ローソク足パターン(ハンマー・包み足など)
1〜3本のローソク足でできる、定番のパターンも測りました。

回数が多いパターンほど、「何もしない場合」との差は±1ポイントほどに収まりました。たとえばハンマーは3,400回出て勝率48.0%(差は+1.5ポイント)。スプレッドを引くと、1回あたりの平均損益はマイナスのままです。
ローソク足パターン 全39通りの表を開く
| パターン | 勝率 | 回数 | 差 | 期待値(R) |
|---|---|---|---|---|
| 赤三兵(買い) | 51.6% | 126回 | +4.8pt | +0.03 |
| トンボ(買い) | 50.2% | 227回 | +3.5pt | +0.00 |
| ハンマー(買い) | 48.0% | 3,400回 | +1.5pt | -0.04 |
| 三川はらみ下げ(売り) | 47.6% | 414回 | +2.0pt | -0.05 |
| 黒三兵(売り) | 47.5% | 99回 | +1.8pt | -0.05 |
| 弱気のはらみ足(売り) | 47.2% | 1,893回 | +1.6pt | -0.06 |
| 長大陽線(買い) | 47.2% | 4,265回 | +0.9pt | -0.06 |
| 強気のはらみ足(買い) | 47.0% | 1,843回 | +0.5pt | -0.06 |
| 陽の丸坊主(買い) | 46.8% | 6,299回 | +0.3pt | -0.06 |
| 小さな陽線2本(はらみ上げ止まり)(売り) | 46.8% | 62回 | +1.0pt | -0.06 |
| 毛抜き底(買い) | 46.7% | 4,376回 | +0.3pt | -0.07 |
| 毛抜き天井(売り) | 46.7% | 5,342回 | +0.9pt | -0.07 |
| インサイドバー(買い) | 46.6% | 30,245回 | +0.0pt | -0.07 |
| コマ(買い) | 46.6% | 15,309回 | +0.1pt | -0.07 |
| 三川包み上げ(買い) | 46.5% | 1,869回 | +0.1pt | -0.07 |
| 逆ハンマー(買い) | 46.5% | 2,669回 | +0.1pt | -0.07 |
| 陽の包み足(文脈なし)(買い) | 46.4% | 14,194回 | -0.0pt | -0.07 |
| 十字線(買い) | 46.3% | 16,497回 | -0.2pt | -0.07 |
| 強気の包み足(買い) | 46.3% | 3,732回 | -0.1pt | -0.07 |
| 陽の寄り付き坊主(買い) | 46.2% | 1,760回 | -0.2pt | -0.07 |
| インサイドバー(売り) | 46.2% | 30,245回 | +0.5pt | -0.08 |
| アウトサイドバー(買い) | 46.2% | 15,245回 | -0.4pt | -0.08 |
| 切り込み線(買い) | 45.6% | 943回 | -0.8pt | -0.09 |
| 十字線(売り) | 45.4% | 16,497回 | -0.3pt | -0.09 |
| 陰の丸坊主(売り) | 45.3% | 5,634回 | -0.4pt | -0.09 |
| 陰の寄り付き坊主(売り) | 45.2% | 1,720回 | -0.4pt | -0.10 |
| 陰の包み足(文脈なし)(売り) | 45.2% | 14,435回 | -0.5pt | -0.10 |
| 流れ星(売り) | 45.2% | 3,075回 | -0.5pt | -0.10 |
| アウトサイドバー(売り) | 45.0% | 15,245回 | -0.7pt | -0.10 |
| 三川はらみ上げ(買い) | 45.0% | 418回 | -1.4pt | -0.10 |
| コマ(売り) | 44.9% | 15,309回 | -0.8pt | -0.10 |
| 宵の明星(売り) | 44.7% | 1,008回 | -0.9pt | -0.11 |
| 首吊り線(売り) | 44.6% | 3,429回 | -1.1pt | -0.11 |
| 長大陰線(売り) | 44.6% | 4,412回 | -1.0pt | -0.11 |
| 弱気の包み足(売り) | 44.3% | 3,942回 | -1.4pt | -0.11 |
| 明けの明星(買い) | 43.5% | 1,011回 | -2.9pt | -0.13 |
| かぶせ線(売り) | 43.3% | 934回 | -2.3pt | -0.13 |
| 三川包み下げ(売り) | 43.2% | 1,803回 | -2.5pt | -0.14 |
| トウバ(売り) | 41.6% | 173回 | -4.1pt | -0.17 |
| 小さな陰線2本(はらみ下げ止まり)(買い) | 38.4% | 73回 | -8.0pt | -0.23 |
期待値(R)は、損切り幅を1としたときの1回あたりの平均損益。マイナスは平均すると損。
チャートパターン 全31通りの表を開く
| パターン | 勝率 | 回数 | 差 | 期待値(R) |
|---|---|---|---|---|
| 上昇ペナント(上抜け)(買い) | 56.9% | 160回 | +9.9pt | +0.14 |
| ベアフラッグ(上抜け)(買い) | 54.4% | 114回 | +7.3pt | +0.09 |
| 下降ペナント(上抜け)(買い) | 52.8% | 144回 | +6.0pt | +0.06 |
| 上昇チャネル(上抜け)(買い) | 52.2% | 475回 | +5.4pt | +0.04 |
| シンメトリカルトライアングル(上抜け)(買い) | 51.2% | 324回 | +4.5pt | +0.02 |
| ブルフラッグ(上抜け)(買い) | 50.9% | 285回 | +4.2pt | +0.02 |
| 逆三尊(買い) | 50.2% | 512回 | +3.6pt | +0.00 |
| 上昇トライアングル(上抜け)(買い) | 49.7% | 719回 | +2.8pt | -0.01 |
| フォーリングウェッジ(上抜け)(買い) | 48.6% | 870回 | +2.1pt | -0.03 |
| ボックス(下抜け)(売り) | 48.4% | 246回 | +2.7pt | -0.03 |
| 下降トライアングル(上抜け)(買い) | 47.9% | 1,068回 | +1.2pt | -0.04 |
| ライジングウェッジ(下抜け)(売り) | 47.7% | 1,077回 | +1.8pt | -0.05 |
| 下降チャネル(上抜け)(買い) | 47.0% | 2,200回 | +0.5pt | -0.06 |
| 二重底(買い) | 47.0% | 649回 | +0.5pt | -0.06 |
| ライジングウェッジ(上抜け)(買い) | 46.1% | 371回 | -0.8pt | -0.08 |
| 上昇チャネル(下抜け)(売り) | 45.7% | 2,142回 | -0.1pt | -0.09 |
| 二重天井(売り) | 45.7% | 598回 | -0.1pt | -0.09 |
| 丸底(買い) | 45.5% | 457回 | -0.9pt | -0.09 |
| 下降チャネル(下抜け)(売り) | 45.3% | 386回 | -0.4pt | -0.09 |
| V字(買い) | 45.3% | 1,088回 | -1.3pt | -0.09 |
| シンメトリカルトライアングル(下抜け)(売り) | 45.1% | 308回 | -0.6pt | -0.10 |
| 三尊(売り) | 44.9% | 461回 | -0.8pt | -0.10 |
| 上昇トライアングル(下抜け)(売り) | 44.8% | 1,061回 | -1.1pt | -0.10 |
| 丸天井(売り) | 44.4% | 500回 | -1.3pt | -0.11 |
| フォーリングウェッジ(下抜け)(売り) | 43.6% | 264回 | -2.2pt | -0.13 |
| ボックス(上抜け)(買い) | 42.9% | 287回 | -3.8pt | -0.14 |
| 逆V字(売り) | 42.1% | 890回 | -3.5pt | -0.16 |
| 上昇ペナント(下抜け)(売り) | 41.9% | 172回 | -3.8pt | -0.16 |
| 下降トライアングル(下抜け)(売り) | 41.1% | 555回 | -4.6pt | -0.18 |
| 下降ペナント(下抜け)(売り) | 40.6% | 138回 | -5.2pt | -0.19 |
| ベアフラッグ(下抜け)(売り) | 39.8% | 352回 | -6.0pt | -0.20 |
| ブルフラッグ(下抜け)(売り) | 37.4% | 91回 | -8.4pt | -0.25 |
なぜ「よく当たる」ように見えるのか
理由1:あとから見ると、形はきれいに見える
過去のチャートで「ここが三尊だった」と見つけるのは簡単です。でも、リアルタイムでは、形が完成する前にどれが三尊になるかは分かりません。うまくいった例だけが目に入りやすいのです。
理由2:回数が少ないと、勝率は大きくブレる

10回中7回勝っても、それは偶然かもしれません。回数が少ないパターンほど、勝率は良くも悪くも極端な数字になります。
理由3:たまたま良かった期間を切り取っている

前半で「何もしない場合より12ポイント良かった」上位10パターンは、後半では1ポイント悪くなりました。前半の良さは、その期間だけのものだったということです。
理由4:たくさん試すと、偶然でも当たりが出る
75通りも試すと、偶然だけで「すごく良い」ように見えるものが数個出ます。今回も統計的な補正をかけると、意味のある差と言えるパターンは0個でした。
では、パターンはどう使えばいい?
パターンを「これが出たら必ず上がる」というサインとして使うのは危険です。使うなら、次の点を確認してください。
- 勝率より期待値を見る
利益と損失の大きさまで含めて、平均でプラスになるかを確認します。 - 「何もしない場合」と比べる
パターンなしで入っても勝率が46%くらいになることを忘れずに。 - 回数が100回未満の数字は信じない
少ない回数の勝率は偶然でブレます。 - 別の期間でも同じ結果になるか確かめる
期間を分けて、どちらでも良い結果が出るかを見ます。 - 損切りを必ず決める
パターンが外れたときにどこで止めるかを、入る前に決めておきます。
追加で調べる価値があるもの
まったく何も無かったわけではありません。「上昇ペナントの上抜け」(56.9%、160回)と、「4時間足のダブルボトム」(61.8%、136回)は良い数字でした。ただし回数が少なく、統計的には偶然と区別できません。ダブルボトムは1時間足では43.1%と逆の結果でした。別の期間や銘柄でも同じ結果が出るかを確かめるまでは、「調べる候補」という扱いです。
注意点
- パターンは数値のルールで判定しました。人が目で見る形とは一致しません。
- 調べたのは1時間足と4時間足、4銘柄だけです。日足や他の銘柄は調べていません。
- スプレッドは固定値で差し引きました。スリッページやスワップは含みません。
- ダイヤモンドフォーメーションなど、一部のパターンは測っていません。カップウィズハンドルとソーサーボトムは「丸底」としてまとめました。
- 過去のデータの検証であり、将来の利益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
用語の説明
- スプレッド
- 買値と売値の差。取引するたびにかかる実質的な手数料です。
- ATR
- その銘柄が1本の足で平均どれくらい動くかの目安。今回は、損切りと利益確定の幅を1ATRにそろえました。
- 期待値(R)
- 1回の取引あたりの平均損益を、損切り幅を1として表したもの。+0.1Rなら、平均して損切り幅の1割ずつ増える計算です。
- 何もしない場合
- パターンに関係なく、すべての足で同じルールで入った場合の成績。パターンの効果を測る基準です。
- 偶然と区別できない
- コインを10回投げて7回表が出ても、コインが偏っているとは言えません。それと同じで、差が小さい・回数が少ないときは偶然の可能性が残ります。