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ローソク足のパターンで
勝てるは本当か?

「よく勝てる」といわれるローソク足・チャートパターンを、4銘柄・約8年のデータで実際に測りました。専門用語はできるだけ使わずに説明します。(2026.10.30 公開)

まず結論

① 「よく勝てる」といわれる定番の19パターンは、実際に測ると勝率 約40〜57%でした。特によく名前が挙がるダブルボトム・ダブルトップ・三角持ち合いも41〜50%です。
② 適当なタイミングで入っても、勝率は約46%になります。パターンが出たあとの勝率は、この「何もしない場合」とほとんど変わりませんでした。
③ 前の期間で成績が良かったパターンも、次の期間では差が消えました。たまたま良く見えていた可能性が高い、ということです。

「パターンは全部無意味」と言い切るものではありません。この記事のルールで測った限り、「よく勝てる」を裏付ける結果は出なかった、という報告です。

きっかけ:「これだけ覚えればいい」と紹介される定番パターン

ダブルボトム、三尊、三角持ち合いなど、教科書でおなじみの形は「よく勝てるパターン」としてよく紹介されています。高い勝率が書き添えられていることもあります。

ただし、そうした紹介にはどの銘柄で、いつの期間を、どうやって測ったのかが書かれていないことがほとんどです。そこで、自分たちのデータで確かめることにしました。

はじめに:「勝率」だけを見てはいけない理由

結果を見る前に、知っておいてほしいことが2つあります。

1. 「何もしない場合」の勝率と比べる

パターンに関係なく、どの足でも同じルールで入った場合の勝率を測ると、約46%でした。50%より少し低いのは、取引のたびにスプレッド(売値と買値の差)がかかるためです。

つまり「このパターンの勝率は48%」と聞いても、何もしない場合の46%より2ポイント良いだけです。パターンに意味があるかどうかは、この差で判断します。

2. 勝率より「1回あたりの平均損益(期待値)」が大事

勝率90%でも、負けたときの損が勝ったときの利益の10倍なら、トータルでは負けます。

勝率40%でも、勝ったときの利益が負けたときの損の2倍あれば、トータルでは勝てます。

この記事では、勝ったときと負けたときの幅を同じ(1:1)にそろえて勝率を測りました。この条件なら、勝率が50%を十分に超えない限り、利益は残りません。

どうやって調べたか

項目内容
銘柄金(XAUUSD)・ドル円・ユーロドル・ポンドドル
期間2018年8月〜2026年(ユーロドル・ポンドドルは2021年6月〜)
時間足1時間足と4時間足
パターン75通り(ローソク足43・チャートパターン32。買い・売りを分けて数えた数)
見つかった回数合計 269,695回
入り方パターンが完成した次の足で入る
勝ち負け利益確定と損切りを同じ幅にして、先に届いた方で判定
コストスプレッドを差し引く

パターンの判定は、人の目ではなく数値のルールで機械的に行いました。ルールは測る前に決め、結果を見てから変えていません。人が目で見る形とは完全には一致しない点にご注意ください。

結果1:「よく勝てる」といわれる19パターン

よく勝てるといわれるパターンの実測の勝率
青が実測の勝率。赤い点線は「何もしない場合」の勝率(約46%)。(タップで拡大)
パターン実測の勝率回数何もしない場合との差
上昇ペナント(買い)56.9%160回+9.9pt
シンメトリカルトライアングル(買い)51.2%324回+4.5pt
上昇フラッグ(買い)50.9%285回+4.2pt
逆三尊(買い)50.2%512回+3.6pt
上昇トライアングル(買い)49.7%719回+2.8pt
下降ウェッジ(買い)48.6%870回+2.1pt
ボックスレンジ(売り)48.4%246回+2.7pt
上昇ウェッジ(売り)47.7%1,077回+1.8pt
ダブルボトム(買い)47.0%649回+0.5pt
ダブルトップ(売り)45.7%598回-0.1pt
カップウィズハンドル / ソーサーボトム(買い)45.5%457回-0.9pt
V字(買い)45.3%1,088回-1.3pt
三尊(売り)44.9%461回-0.8pt
逆カップ / ソーサートップ(売り)44.4%500回-1.3pt
ボックスレンジ(買い)42.9%287回-3.8pt
逆V字(売り)42.1%890回-3.5pt
下降トライアングル(売り)41.1%555回-4.6pt
下降ペナント(売り)40.6%138回-5.2pt
下降フラッグ(売り)39.8%352回-6.0pt

一番高かったのは「上昇ペナント」の上抜けで56.9%(160回)でした。特によく名前が挙がる4つ(上昇トライアングル・ダブルボトム・下降トライアングル・ダブルトップ)は41.1〜49.7%でした。

それぞれの形と、実測の勝率を図にまとめました。左が買い、右が売りです。

チャートパターンの図解1
図は形のイメージで、実際のチャートではありません。「差」は何もしない場合(約46%)との勝率の差。(タップで拡大)
チャートパターンの図解2
ペナント・ウェッジ・三角持ち合い・ボックス・V字。(タップで拡大)

結果2:ローソク足パターン(ハンマー・包み足など)

1〜3本のローソク足でできる、定番のパターンも測りました。

ローソク足パターンの図解
黄色の帯がパターンの足。緑=陽線、赤=陰線。(タップで拡大)

回数が多いパターンほど、「何もしない場合」との差は±1ポイントほどに収まりました。たとえばハンマーは3,400回出て勝率48.0%(差は+1.5ポイント)。スプレッドを引くと、1回あたりの平均損益はマイナスのままです。

ローソク足パターン 全39通りの表を開く
パターン勝率回数差期待値(R)
赤三兵(買い)51.6%126回+4.8pt+0.03
トンボ(買い)50.2%227回+3.5pt+0.00
ハンマー(買い)48.0%3,400回+1.5pt-0.04
三川はらみ下げ(売り)47.6%414回+2.0pt-0.05
黒三兵(売り)47.5%99回+1.8pt-0.05
弱気のはらみ足(売り)47.2%1,893回+1.6pt-0.06
長大陽線(買い)47.2%4,265回+0.9pt-0.06
強気のはらみ足(買い)47.0%1,843回+0.5pt-0.06
陽の丸坊主(買い)46.8%6,299回+0.3pt-0.06
小さな陽線2本(はらみ上げ止まり)(売り)46.8%62回+1.0pt-0.06
毛抜き底(買い)46.7%4,376回+0.3pt-0.07
毛抜き天井(売り)46.7%5,342回+0.9pt-0.07
インサイドバー(買い)46.6%30,245回+0.0pt-0.07
コマ(買い)46.6%15,309回+0.1pt-0.07
三川包み上げ(買い)46.5%1,869回+0.1pt-0.07
逆ハンマー(買い)46.5%2,669回+0.1pt-0.07
陽の包み足(文脈なし)(買い)46.4%14,194回-0.0pt-0.07
十字線(買い)46.3%16,497回-0.2pt-0.07
強気の包み足(買い)46.3%3,732回-0.1pt-0.07
陽の寄り付き坊主(買い)46.2%1,760回-0.2pt-0.07
インサイドバー(売り)46.2%30,245回+0.5pt-0.08
アウトサイドバー(買い)46.2%15,245回-0.4pt-0.08
切り込み線(買い)45.6%943回-0.8pt-0.09
十字線(売り)45.4%16,497回-0.3pt-0.09
陰の丸坊主(売り)45.3%5,634回-0.4pt-0.09
陰の寄り付き坊主(売り)45.2%1,720回-0.4pt-0.10
陰の包み足(文脈なし)(売り)45.2%14,435回-0.5pt-0.10
流れ星(売り)45.2%3,075回-0.5pt-0.10
アウトサイドバー(売り)45.0%15,245回-0.7pt-0.10
三川はらみ上げ(買い)45.0%418回-1.4pt-0.10
コマ(売り)44.9%15,309回-0.8pt-0.10
宵の明星(売り)44.7%1,008回-0.9pt-0.11
首吊り線(売り)44.6%3,429回-1.1pt-0.11
長大陰線(売り)44.6%4,412回-1.0pt-0.11
弱気の包み足(売り)44.3%3,942回-1.4pt-0.11
明けの明星(買い)43.5%1,011回-2.9pt-0.13
かぶせ線(売り)43.3%934回-2.3pt-0.13
三川包み下げ(売り)43.2%1,803回-2.5pt-0.14
トウバ(売り)41.6%173回-4.1pt-0.17
小さな陰線2本(はらみ下げ止まり)(買い)38.4%73回-8.0pt-0.23

期待値(R)は、損切り幅を1としたときの1回あたりの平均損益。マイナスは平均すると損。

チャートパターン 全31通りの表を開く
パターン勝率回数差期待値(R)
上昇ペナント(上抜け)(買い)56.9%160回+9.9pt+0.14
ベアフラッグ(上抜け)(買い)54.4%114回+7.3pt+0.09
下降ペナント(上抜け)(買い)52.8%144回+6.0pt+0.06
上昇チャネル(上抜け)(買い)52.2%475回+5.4pt+0.04
シンメトリカルトライアングル(上抜け)(買い)51.2%324回+4.5pt+0.02
ブルフラッグ(上抜け)(買い)50.9%285回+4.2pt+0.02
逆三尊(買い)50.2%512回+3.6pt+0.00
上昇トライアングル(上抜け)(買い)49.7%719回+2.8pt-0.01
フォーリングウェッジ(上抜け)(買い)48.6%870回+2.1pt-0.03
ボックス(下抜け)(売り)48.4%246回+2.7pt-0.03
下降トライアングル(上抜け)(買い)47.9%1,068回+1.2pt-0.04
ライジングウェッジ(下抜け)(売り)47.7%1,077回+1.8pt-0.05
下降チャネル(上抜け)(買い)47.0%2,200回+0.5pt-0.06
二重底(買い)47.0%649回+0.5pt-0.06
ライジングウェッジ(上抜け)(買い)46.1%371回-0.8pt-0.08
上昇チャネル(下抜け)(売り)45.7%2,142回-0.1pt-0.09
二重天井(売り)45.7%598回-0.1pt-0.09
丸底(買い)45.5%457回-0.9pt-0.09
下降チャネル(下抜け)(売り)45.3%386回-0.4pt-0.09
V字(買い)45.3%1,088回-1.3pt-0.09
シンメトリカルトライアングル(下抜け)(売り)45.1%308回-0.6pt-0.10
三尊(売り)44.9%461回-0.8pt-0.10
上昇トライアングル(下抜け)(売り)44.8%1,061回-1.1pt-0.10
丸天井(売り)44.4%500回-1.3pt-0.11
フォーリングウェッジ(下抜け)(売り)43.6%264回-2.2pt-0.13
ボックス(上抜け)(買い)42.9%287回-3.8pt-0.14
逆V字(売り)42.1%890回-3.5pt-0.16
上昇ペナント(下抜け)(売り)41.9%172回-3.8pt-0.16
下降トライアングル(下抜け)(売り)41.1%555回-4.6pt-0.18
下降ペナント(下抜け)(売り)40.6%138回-5.2pt-0.19
ベアフラッグ(下抜け)(売り)39.8%352回-6.0pt-0.20
ブルフラッグ(下抜け)(売り)37.4%91回-8.4pt-0.25

なぜ「よく当たる」ように見えるのか

理由1:あとから見ると、形はきれいに見える

過去のチャートで「ここが三尊だった」と見つけるのは簡単です。でも、リアルタイムでは、形が完成する前にどれが三尊になるかは分かりません。うまくいった例だけが目に入りやすいのです。

理由2:回数が少ないと、勝率は大きくブレる

回数と勝率の差の関係
灰色の帯は「偶然でもこれくらいはブレる」範囲。ほとんどのパターンがこの中に入りました。(タップで拡大)

10回中7回勝っても、それは偶然かもしれません。回数が少ないパターンほど、勝率は良くも悪くも極端な数字になります。

理由3:たまたま良かった期間を切り取っている

前半と後半の比較
前半(2018〜2022年)で成績が良かった上位10パターンの、後半(2023〜2026年)の成績。(タップで拡大)

前半で「何もしない場合より12ポイント良かった」上位10パターンは、後半では1ポイント悪くなりました。前半の良さは、その期間だけのものだったということです。

理由4:たくさん試すと、偶然でも当たりが出る

75通りも試すと、偶然だけで「すごく良い」ように見えるものが数個出ます。今回も統計的な補正をかけると、意味のある差と言えるパターンは0個でした。

では、パターンはどう使えばいい?

パターンを「これが出たら必ず上がる」というサインとして使うのは危険です。使うなら、次の点を確認してください。

  • 勝率より期待値を見る
    利益と損失の大きさまで含めて、平均でプラスになるかを確認します。
  • 「何もしない場合」と比べる
    パターンなしで入っても勝率が46%くらいになることを忘れずに。
  • 回数が100回未満の数字は信じない
    少ない回数の勝率は偶然でブレます。
  • 別の期間でも同じ結果になるか確かめる
    期間を分けて、どちらでも良い結果が出るかを見ます。
  • 損切りを必ず決める
    パターンが外れたときにどこで止めるかを、入る前に決めておきます。

追加で調べる価値があるもの

まったく何も無かったわけではありません。「上昇ペナントの上抜け」(56.9%、160回)と、「4時間足のダブルボトム」(61.8%、136回)は良い数字でした。ただし回数が少なく、統計的には偶然と区別できません。ダブルボトムは1時間足では43.1%と逆の結果でした。別の期間や銘柄でも同じ結果が出るかを確かめるまでは、「調べる候補」という扱いです。

注意点

  • パターンは数値のルールで判定しました。人が目で見る形とは一致しません。
  • 調べたのは1時間足と4時間足、4銘柄だけです。日足や他の銘柄は調べていません。
  • スプレッドは固定値で差し引きました。スリッページやスワップは含みません。
  • ダイヤモンドフォーメーションなど、一部のパターンは測っていません。カップウィズハンドルとソーサーボトムは「丸底」としてまとめました。
  • 過去のデータの検証であり、将来の利益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

用語の説明

スプレッド
買値と売値の差。取引するたびにかかる実質的な手数料です。
ATR
その銘柄が1本の足で平均どれくらい動くかの目安。今回は、損切りと利益確定の幅を1ATRにそろえました。
期待値(R)
1回の取引あたりの平均損益を、損切り幅を1として表したもの。+0.1Rなら、平均して損切り幅の1割ずつ増える計算です。
何もしない場合
パターンに関係なく、すべての足で同じルールで入った場合の成績。パターンの効果を測る基準です。
偶然と区別できない
コインを10回投げて7回表が出ても、コインが偏っているとは言えません。それと同じで、差が小さい・回数が少ないときは偶然の可能性が残ります。