はじめての方へ ・ AI と EA
AI が来たのに、なぜ FX で勝ち続けるのは難しいのか
LLM と機械学習の違い
文章を書き、プログラムを作り、試験問題を解く AI が当たり前になりました。「それなら FX の値動きも当てられるのでは?」と考えるのは自然なことです。
ただ、ひとことで「AI」といっても、中身はいくつかの種類に分かれていて、得意なことがまったく違います。このページでは、その違いを整理して、FX で何に使えて、何に向きにくいのかを、私たちの検証の数字も交えて説明します。
1「AI」には大きく3つある
| LLM (大規模言語モデル) | 機械学習 | ルールで動く EA | |
|---|---|---|---|
| 例 | ChatGPT・Claude・Gemini など | 決定木・LightGBM・ニューラルネットなど | 「RSI が 30 以下で買い」など、人が決めた条件 |
| 何から学ぶ? | 大量の文章 | 過去の数値データ(値段・時刻・値幅など) | 学ばない。人が決める |
| 得意なこと | 文章の理解・要約、プログラムを書く | 数値の中のくせを見つける | 決めたことを毎回同じに実行する |
| 過去で確かめる | 難しい | できる(期間を分ければ) | できる |
EA の世界で「AI 搭載」と書かれているときも、どれを指しているかは製品によって違います。機械学習のモデルを中に入れているもの、LLM に相場を聞いているもの、ルールで動く EA を「AI」と呼んでいるものもあります(くわしくはAI 搭載と機械学習 EA の違い)。
2LLM は、値段の予測そのものには向きにくい
LLM はとても賢く見えますが、「次に値段が上がるか下がるか」を当てる道具としては、次のような理由で使いにくい面があります。
- 文章から学んだ道具だから。LLM が学んでいるのは「言葉のつながり」です。何百万本もの値動きの数字から、統計のくせを見つけるように作られているわけではありません。
- 同じ質問でも、答えが変わることがある。同じチャートを見せても、聞くたびに少し違う答えが返ってくることがあります。毎回同じ答えが返らないものは、過去のデータで「この判断を 1,000 回続けたらどうなったか」を確かめるのが難しくなります。
- 過去を「知っている」ことがある。LLM は、学習した時点までのニュースや相場の出来事を覚えていることがあります。過去のチャートで試すと、答えを知った状態で解いてしまい、実際より良く見えることがあります。
- 時間と費用がかかる。1 回の判断に数秒かかり、使うたびに料金がかかるため、短い時間で何度も売買する使い方には向きません。
ニュースや経済指標の内容をまとめる、相場の状況を言葉で整理する、自分の判断の理由を記録する、といった文章を扱う仕事は LLM の得意分野です。LLM の意見を使う場合も、最後は「ロットの上限」「1 日の損失の上限」のような数字のルールで止める作りにしておくと安心です。
3LLM は、EA を作る道具としては強い
LLM がいちばん力を発揮するのは、相場を当てることではなく、EA を作って確かめる作業です。
- 考えを言葉からプログラムにする。「4 時間足が上向きのときだけ、押し目で買う」といった考えを、MT5 の EA のプログラム(MQL5)に書き起こせます。
- 間違いを探す。ロットの計算が合っているか、決済の条件が抜けていないかを、一緒に確かめられます。
- 検証の結果を整理する。年ごとの成績、最大証拠金DD、負けが続いた時期などを表にまとめ、次に何を試すかを考えられます。
以前は、プログラムが書けないと自分の考えを EA にすることは難しかったのですが、今は LLM の助けで、考えを形にして、過去のデータで確かめるまでがずっと身近になりました。私たちも、EA の開発や検証の作業に LLM を使っています。
大事なのは、勝てるかどうかを決めるのは LLM ではなく、過去のデータで測った結果だということです(インジケーターは本当に稼げるのかも参考になります)。
4機械学習は、成績を残せるものもある
機械学習は、過去の数値データから「こういう形のあとは、こう動きやすかった」というくせを学ぶ方法です。値動きの数字を直接扱うので、LLM より FX に向いています。実際に、機械学習を使って成績を残している EA もあります。
ただし、機械学習を使えば勝てる、というわけではありません。次の点を守らないと、過去にだけ合ったモデルができてしまいます。
- 学ぶ期間と、確かめる期間を分ける。学んだのと同じ期間で成績を測ると、答えを見ながら試験を受けるのと同じになり、実際より良く見えます。
- 相場が変わると効かなくなることがある。学んだ時期と相場の性格が変わると、くせも変わります。
- 材料を増やしすぎない。たくさんの数字を入れると、偶然のくせまで覚えてしまいます。
私たちが試した中には、金(XAUUSD)のティックデータを使い、直近 1〜4 週間のデータで学び直して、1〜5 分先の向きを当てる方法がありました。測ってみると、当たり具合を表す数字(AUC)は 0.51。0.5 が「当てずっぽう」なので、ほとんど当たっていないことになります。取引のコストを引くと赤字で、さらに直近だけで学んだモデルは、長い期間で学んだモデルにほとんどの週で負けました。そのため製品にはしていません。機械学習でも、測ってみるまでは本当に効くかわかりません。
5機械学習 EA の例(AI TRADER 5.3)
私たちの AI TRADER 5.3 は、機械学習のモデル(ONNX という形式)を EA の中に入れ、MT5 の中で判断します。上の注意点にそって、次のように作っています。
- しきい値などの設定は 2022 年 1 月〜2025 年 1 月のデータで決めました。
- 成績は、そのあとの 2025 年 1 月 1 日〜2026 年 8 月 8 日で測っています。設定を決めるときに一度も見ていない期間です。
| ゴールド(XAUUSD) 0.01 ロット | 決済の数 | PF | 最大証拠金DD (含み損込み) |
|---|---|---|---|
| Exness | 741 | 1.55 | 33,675 円(3%) |
| XMTrading(KIWAMI 極) | 676 | 1.46 | 46,615 円(4%) |
初期資金 100 万円、各業者の実ティック、約定遅延なしで 1 回走らせたバックテストの結果です。運用の実績ではありません。経済指標の前後 60 分は新しく入らない設定(5.3 で追加)は、この期間の結果を見てから決めたため、この設定については「見ていない期間の結果」ではありません。6 通貨の結果やくわしい条件は製品ページに載せています。
機械学習の EA でも、見るべき数字は普通の EA と同じです。学んだ期間とは別の期間で、どれだけの含み損を抱えながら、どれだけ残ったかを見てください(バックテストの数字の読み方)。
6「AI 搭載」EA を見るときに確かめること
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 何の「AI」か | 機械学習のモデルか、LLM か、ルールか。説明がない場合は、中身を判断できません。 |
| 学んだ期間と、成績を測った期間が分かれているか | 同じ期間で測った成績は、実際より良く見えます。 |
| 見ていない期間の成績と、最大証拠金DD | モデルの実力が出るのは、学んでいない相場です。 |
| 学び直し(再学習)の扱い | いつ、どのデータで学び直すのか。学び直すたびに性格が変わることもあります。 |
| フォワードの記録があるか | バックテストのあとの実際の相場で、同じように動いているか(私たちの記録はフォワード。デモ口座で動かしています)。 |
AI は、正しく使えば EA 作りを大きく助けてくれる道具です。「AI だから勝てる」ではなく、何の AI を、どう確かめたかで見ていくと、選びやすくなります。
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機械学習のモデルを中に入れた EA の作り方と成績は、製品ページでくわしく公開しています。
自分で EA を作って確かめたい方には、私たちが使っている解析・検証の道具一式もあります。